著者: 三膳 孝通 (IIJ 取締役 戦略企画部長)
インターネットが我々のコミュニケーションのあり方を大きく変えた。ここでは、場所・時間・コストを文字通り「超越」し、情報通信の新時代を切り拓いたインターネットの近未来を展望してみたいと思う。
インターネットに代表される情報通信ネットワークの登場・普及によって、近年、急速にコミュニケーションの利便性が向上し、その多様化が進みました。今や人々は、全世界のあらゆる場所で、何時でも、自由に、様々な形態でコミュニケートできつつあります。
それでは、なぜ、インターネットの登場が、コミュニケーションのあり方をこれほど大きく変えたのでしょうか。それは、インターネットが、従来のコミュニケーション・メディアとは全く異なる特質を持つためです。具体的な違いは、
(1)デジタル化により、あらゆるコンテンツを扱えるようになった、
(2)複製が容易になった、
(3)あらゆる場所から場所へ、高速かつ容易に情報を発信できるようになった、

以上の三点です。

まず(1)ですが、デジタル情報処理技術の進歩によって、文字・画像・音声・動画といった様々なコミュニケーション・コンテンツを、「デジタル」という一つの方式で処理できるようになった、と言い換えられます。これによって、文字か画像かなど、コンテンツの形態を意識せずにコミュニケートできるようになったのです。

(2)は、情報をデジタル化することによって、「コンテンツの複製」が非常に簡単になったことを意味します。紙やフィルムといった物理的なメディアにコンテンツを複製する場合、その数が増えれば増えるほど、莫大な資源・エネルギー・空間が必要となります。いっぽう、情報をデジタルで扱うことができれば、(コンピュータの処理能力が高ければ高いほど)容易に大量の複製を作ることができます。これによって、多くの人々の間で、同じクォリティの情報を共有できるようになったのです。

最後の(3)は、デジタル情報通信ネットワークの登場・普及にともなって、デジタル化されたコンテンツを、距離に関係なく、何ヵ所にでも、同時に届けられるようになった、ということです。例えば、印刷物のようなメディアを輸送する場合、必ず流通機構(交通手段や道路網)を経なければならず、しかもそのコストは、コンテンツの量や移動距離に比例するため、利用者の大きな負担となっていました。また電話等の通信も、運べるコンテンツに制限があったり、時間や距離に応じてコストが加算されるといった課題を抱えていました。ところがインターネットの登場で、ネットワークにアクセスできる環境さえあれば、劇的に安く、そして瞬時に、世界中のあらゆる場所とコミュニケートできるようになったのです。

これによって、インターネットでは、今までのメディアでは考えられなかった多種多様なコミュニケーションが実現されました。個人が全世界に向けて情報発信できる「blog」、距離や時間を越えて、知り合った人達がコミュニティを形成できる「SNS」、動画コンテンツを全世界の人達同士で共有できる「You Tube」などです。

それでは今後、インターネット、そしてコミュニケーションは、どうなっていくのでしょうか。

インターネットは、基本的に情報通信技術の一形態なので、その時々に求められる社会的なニーズに応じて変化していくでしょう。
まず何よりも、インターネットが、来たる情報化社会において、ますます重要な「社会インフラ」になることは明らかです。つまり、電気・ガス・水道のように、利用できることが当たり前の、生活に溶け込んだ存在になると思うのです。 ですから、将来、インターネットが目指すべきは、気づかないうちにネットワークを介したサービスを利用している我々にとって、必要不可欠な「社会インフラ」であり、誰もが、何時でも、どこでも、安全に、安心して使えるコミュニケーション・ツールの共通基盤である、と言えるでしょう。

いっぽうコミュニケーションの未来には、二つの方向――利便性の向上と新しい形態の登場――が考えられます。

まず既存のコミュニケーションですが、例えば、郵便・電話・テレビのような一般的なものだけでなく、出版や金融といった様々な業界でのコミュニケーションや、伝言板や回覧板などの通信・放送ビジネス以外でのコミュニケーションも、インターネットや携帯電話といった新しい情報通信技術の発展によって、もっと安全で使いやすくなっていくでしょう。
当然、新しいコミュニケーション形態の登場も待たれるところです。例えば現状では、デジタル情報として送られているのは、五感で言うと「視覚」と「聴覚」の二要素に限られています。しかし、近い将来、その他の感覚に対応した新しいインターフェースが生み出され、新たな形態のコミュニケーションが現れてくるでしょう。

今後も新しいコミュニケーションが、インターネットを通して数多く登場するでしょう。なぜなら、インターネットはアプリケーションを制限しないため、利用者は自由な使い方ができるからです。
今までのネットワークでは、コミュニケーションを担う主な機能は、ネットワークの側にありました。例えば電話なら、通信(誰と誰を結ぶのか)を制御する機能は、交換機網というかたちで実現されていたので、利用者サイドには相手を指定するためのダイアルと音声の入出力のための受話器があるだけでした。ところがインターネットでは、ネットワークは基本的にデジタル情報をやりとりする役割に特化しているので、電子メールを使ったり、ホームページを見たりするのは、利用者が自分のパソコンなどで自由に行えるのです。

また、新しいアプリケーションを試そうと思った場合、既存のネットワークだと、ネットワーク側に新しい機能を実装する必要がありますが、インターネットなら、情報の送り手と受け手がその新しいアプリケーションさえ共有していれば、ネットワークを気にすることなく、直ちに利用できます。
このようにインターネットの登場によって、様々なコミュニケーションが出現し、利用者の利便性は大幅に向上しました。ただ、それと同時に、コンピュータウイルスや迷惑メールといった悪意などがインターネット上に発生し、利用しづらくなっているのも事実です。

社会インフラとしてインターネットが発展するためには、安心かつ安全に使える環境が不可欠です。葉書を出すのに届くかどうか悩まなくてもいいように、コンセントを繋ぐのに危ないかどうか確かめなくてもいいように、ネットワークの使用に際しても、安全か否かを考えることなく使えることが理想です。このような理想の実現を目指し、私たちは既存の技術の改善や新しい技術の導入などに、これからも努力していきます。





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