IIJ America

データセンター特集:前編データセンターの未来像  ~エネルギー循環の中で動き始めた~ :1

IIJ ソリューション本部 副本部長  山井美和


ある夏の物語

二〇一X年、ある夏の朝、物流企業のICT(=Information and Communication Technology)マネージャを務める出田仙太は、自宅で子どもたちと朝食をとりながら、今日も平年を上回る常夏の気温になるというテレビの天気予報を見て、五年前の夏の日を思い出していた。

その日は、地球温暖化の影響なのか、いつになく暑く、観測史上最高気温を記録していた。
そんな昼下がり、データセンターにラックを借りて設置していたサーバに異常が発生した。ラック内の温度上昇によるサーバの緊急自動停止だった。仙太はすぐにデータセンター運営会社に連絡した。
「いったい、どうなっているのか。」
「空調設備の室外機周辺の気温が、屋上の照り返しの影響で、設計想定の三五度より十度も高い四五度になり、冷房能力が極端に低下したんです。」
「そんな、馬鹿な。」
仙太は愕然とした。

その後、室外機の周りに打ち水をするなどデータセンター運営会社の懸命の努力によって、周辺の温度を下げることに成功。空調機も通常の性能に回復したので、サーバを再起動し、システムを復旧させた。

ところがその直後、今度は大規模な停電が発生した。
東京都区部の電力消費量が急増し、供給可能電力量を上回ったのだった。データセンターでは非常用発電機が作動したので、サーバを停止することなく運用を継続できたが、空調の止まった高層ビルでは、室温がどんどん上昇し、体調を崩す社員が続出、仕事どころではなくなった。
非常用発電機のあるビルの屋上からは、ガスタービンやディーゼルエンジンの排気がどんどん吐き出され、工業地帯さながらの様相となった。ICT公害――そんな言葉を連想した一日だった。

仙太は、現在、在宅勤務である。重要な社会インフラの一端を担う物流産業は、昼夜、陸海空全ての手段を使って、人や物を運び続けている。そのため、二四時間止まらないシステムは不可欠な存在であった。

物流企業では、物流システム自体が企業間競争における重要な武器であるため、その企業のICTマネージャは、運営上ひじょうに重要な役割を占める。 それは、二四時間労働であると言っても過言ではないのだが、そのために家族を犠牲にしたくない。
そこで仙太が中心となって、当時流行しはじめていたプラットフォームサービスを利用して、自社開発したシステムを導入し、物流システムを刷新した。 ICTマネージャが、ネットワークを介した遠隔制御によって、どこからでも物流システムを管理できる仕組みにつくり替え、その運用をデータセンターに一任、システムの運営に関わるコストを削減させたのだ。

それを機に仙太は、在宅勤務制度を活用し、本社のある東京から新幹線で二時間ほどの郷里に転居し、毎朝子どもたちを学校に送り出してから仕事を始めるライフスタイルに切り替えた。

仙太はかねてから、物流企業の果たすべき役割は、二四時間、物流を止めないことであり、そこに経営資源を集中するためには、企業のICT部門が戦略的なシステムを企画・設計するいっぽうで、システム開発やインフラ整備は専門家に任せるべきであるという自論を持っていた。

そして彼は、この考えを実行に移し、自分の企業を世界有数のICT技術を活用できる先進的な物流企業へと変革させたのであった。

データセンターに求められること

こんな話は、空言のように聞こえるかもしれません。
しかし、データセンターに携わる者にとって、ICT技術を活用するうえでひじょうに重要なのが、〝電力と空調〟の問題です。このことを考えるには、データセンターの歴史をひも解く必要があります。

最初、電算センターに置かれた大型汎用コンピュータが、クライアントサーバ技術の発展とともに、小型サーバに置き換わり、センターのスペースに余裕が出てきました。
同時に、交換機などの通信機器が小型化して、通信会社の持つセンターのスペースにも余裕が出てきました。
そんなタイミングで、通信の自由化による情報産業の競争が始まった――こうした背景がデータセンターの出発点にあります。

もともと「ハウジングサービス」という言葉は、金融機関などが、通信回線の専用線化を進めながら、通信会社の設備のとなりに自分の会社の多重化装置や内線交換機を置き、その保守を外部に委託するようにしたところからきています。
そこに、インターネットに接続するためのルータを、インターネットサービスプロバイダが設置して、相互接続するようになったので、「コロケーションサービス」とも呼ばれるようになりました。
さらに同じ場所に、ホスティングサービスや映像配信など、さまざまなデータが集まってきました。

データが集まるところだから「データセンター」という名前になったのかは定かではありませんが、いつの頃からか、ハウジングサービスやコロケーションサービス、さらにはマネジメントサービスを提供する場所を総称して〝データセンター〟と呼ぶようになったのです。

ところで、データセンターが利用者に提供するもの――それは、二四時間三六五日止まらない「電気と空調」です。
環境対策という点を考えれば、近年、資源エネルギーを空気中で燃やすことで生じる「二酸化炭素」が大きな問題となっています。化石燃料を燃やして電力を発電すれば、二酸化炭素が排出されます。

例えば水道などは、一見無関係なように思われますが、動力源として電力を使っているため、間接的に二酸化炭素を排出しています。結局、電気を使うものは全て、大なり小なり二酸化炭素の排出に関連しているのです。

また、データセンターから排出される熱で地球温暖化が進むわけではありませんが、熱を冷やすための空調用の電力が、全体としての電力消費量を押し上げているのも事実です。

しかしいっぽうで、データセンターは、その集約効果によって、供給される電力をもっとも効率よく使っている場所とも言えます。
だからこそ、利用者から求められる「安定した、止まらない電気と空調」にくわえ、地球環境にも配慮した、省エネルギーや環境対策につながる取り組みが求められるのです。


次回はエネルギー循環を実現するソリューション工場と、次世代のデータセンターをお届けいたします。


ページの上に戻る

Copyright © 2008 IIJ America Inc. All Rights Reserved.