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IIJ ソリューション本部 副本部長 山井美和
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エネルギー循環を実現するソリューション工場
ICT業界が、技術革新によって機器の小型化・高性能化を進めた結果、単位面積・単位体積あたりの「消費電力量」は、指数関数的に増えました。それと歩調を合わせて、機器が発する「発熱量」も増加しました。CPUクロックはマイクロ波の領域に達し、また、微細加工技術で一〇〇ナノより小さいパターンを作れるようになって以来、省電力とは言いながらも――クッキングヒータのような熱を発する――薄型1Uサーバが登場するようになりました。さらには、高密度に集積された、大規模なブレードサーバも生まれています。
それでは、データセンターの仕事は、これらの機器を設置するのに最適な環境を提供し、機器を「預かる」だけでいいのでしょうか。
さまざまなシステムは、CPUとストレージとネットワークのうえに成り立っていると言っても過言ではありません。その中で、ソフトウェアが動いて、さまざまなアプリケーションとなって動作し、ビジネスの基盤を築いています。メーカーの工場が、ガスや電気や水をエネルギー源として、部品を組み立て、製品を生産するのと同じように、データセンターは、CPUとストレージとネットワークをエネルギー源として、アプリケーションを動作させ、ビジネスを生み出しているのです。
ですから、「データセンターの利用者は、CPUとストレージとネットワークを使った分だけ料金を負担する」――そんなシステムができ上がれば、それはビジネス的にも適正な仕組みであると言えるでしょう。最近、ユーティリティコンピューティングという考え方が徐々に広まりつつありますが、二〇年前にも、コピュータの「時間貸し」サービスがありました。当時は、時期尚早だったのかもしれませんが、このような考え方に立てば、データセンターも、使った分だけ料金を負担してもらうコスト構造を導入することで、〝ビジネスを創造するソリューション工場〟になれるのではないでしょうか。
当然のことながら、データセンターには産業廃棄物も存在します。ICT機器から排出される「熱」「風」「音」、この三つがデータセンターの出す産業廃棄物です。これらを厄介だからと言って捨てるのではなく、リサイクルしていくことも、これからのデータセンターに求められる仕事ではないでしょうか。
別の産業で捨てられているモノの中にも、データセンターで使えそうなモノがあるかもしれませんし、逆に、データセンターが捨てている熱や、放出している流体圧力、そして回り続けるファンの騒音なども、将来的にはリサイクルできるようになるかもしれません。つまり、「熱」「風」「音」という三つの産業廃棄物を循環させることができれば、地球環境に優しいデータセンターになれると思うのです。

次世代のデータセンターとは
都心のデータセンターは、いつも人気があります。なぜでしょうか?
一般の不動産事業と違って、データセンターは、設備の陳腐化による能力低下のサイクルが早いので、自分でその設備を所有すれば、それは確実にコスト面に響いてきます。
ICT業界の技術革新は、まだまだ続くでしょう。だとすると、設備の維持や更改コストなどは今後も必要ですから、インフラを自前で持つことが、果たしてその企業本来の事業活動にプラスになるか否かは、一考を要するところでしょう。
それならば、ソフトウェアだけを預けてみてはどうでしょうか? つまり、インフラとして陳腐化しない設備をデータセンターに預けてみるのです。設備の成長とともに進化するデータセンターにソフトウェアを預けて、その企業のコアコンピタンスを発揮するための最適なコスト構造を実現することができるなら、そこまで踏み込んでもいいのではないでしょうか。そうしたことが可能になれば、データセンターを使うことで、エネルギーを循環させ、ひいては地球環境にも貢献できる社会的仕組みが実現されることでしょう。次世代のデータセンターは、きっとそんな姿になると思います。
むかし「人に優しい」をコンセプトとしてつくられたデータセンターもすでに満五年を迎え、施設拡張の時期に差し掛かっています。たった五年なのに、設計当時には想定されなかった利用状況が生じており、驚きを隠せません。そんな現状で、次世代のデータセンターを考えなければならないのは、何という因果でしょうか。
次世代のデータセンターを考えるうえでのキーワードは、
- 存在の秘匿
- 機器の成長に合わせて成長できる設備
- 人と機械の共生
- 環境に配慮したエネルギー循環の実現
- 新しい付加価値の創造
以上の五点に集約されるでしょう。
次世代に思うこと、それは「ただ普通のデータセンターは要らない」ということです。子供のころ、電子ブロックで遊んだ世代、サンダーバードや宇宙大作戦、ウルトラQや鉄腕アトムを食い入るように見ていた世代が、あのころブラウン管の中で見ていたモノの一部は、いまでは身近なモノとして実現されています。ですから次世代においても、すでにでき上がっているモノを再び作るのではなく、「いまは実現できそうにないと思えるモノ」に挑戦してほしいと思うのです。なぜなら、そのようなモノにこそ「未来の姿」が見え隠れしているからです。
空気のようなサービス、森のようなネットワーク、その森の中で環境を考えながら働き続けるデータセンター。これこそが、データセンターの未来像と言えるのではないでしょうか。

未来の物語
二〇四X年、仙太は定年を迎えた。
昨年生まれたばかりの孫を膝に抱きながら、社会インフラとして整備された〝マルチエネルギーパイプ〟につながれた電通器の映像パネルを仙太は見ていた。そこには、南極観光船「旭光丸」が氷を割りながら南極大陸への最後の航海をしているニュースが流れていた。旭光丸は、十年前、地球環境学の研究員であった娘が、地球温暖化阻止の国際観測チームの一員として南極に滞在していたとき、彼女に会いに行くために乗船した大型客船だった。
「そういえば、むかし船乗りだったおじいちゃんが、よく南極に行きたかったと話していたよね」と妻が語りかけてきた。
ICT業界の働きかけにより、世界中の企業が環境回復に力を入れた結果、温暖化にも歯止めが掛かり、地球環境は静かに落ち着きを取り戻し始めていた。現在、データセンターは、エネルギーパイプで結ばれて、エネルギー循環の中で静かに動き続けている。
世界中の人は、データセンターがどこにあるのか、どこで動いているのか、意識すらしていない。山の中にあるのかもしれないし、海の上にあるのかもしれない、もしかしたら宇宙に浮かんでいるのかもしれない。
そもそも、人々の社会生活の基盤を支える大切なデータがどこにあるのか、そのようなことを特に明らかにする必要はない。だからデータセンターも、完全かつ確実に――そして、どこで動いているのか意識されることもなく――維持されていくのが重要なのである。

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